緊急避妊薬の市販化に賛成する。理由は…

創作と直接的な関係はないけど、「創作物の内容に文句つけるより、現実に生きてるひとの人権の方が大事!」という意志表示としてこの記事を投稿します。ピルとの付き合い方(公式)@ruriko_pilltonさんというツイッターアカウントに、「中絶を殺人」と言う認識で噛みついてるひとがいるのを見て、呟いた内容から再編しました。

2016/10/20 10:24 「普段からちゃんと避妊してる人向け」の部分を付記。さかしょう@sakasyou0875さんからのご指摘から。

避妊の権利・中絶の権利がなぜ人権なのか?
それは、「産むか産まないかを国に決められること」は人権侵害だから。
今の日本の法律には堕胎罪が無いのはなぜか?
堕胎は罪にならない。それは、望まない妊娠を止めることは、ひとえに母になるひとの権利を擁護し、望まない出産につづく深刻な児童虐待のリスクを減らすことだから。
私は「緊急避妊薬の市販化に賛成します」と主張します。なお、低用量ピルに関しては違いますよ。

まず第一に。
『緊急避妊薬の市販化に反対する人』と私とでは、前提になる認識が大きく異なるようです。

「それでピルを使わずに出産した後、児は安全に幸福に生きてゆけるのか?」
という疑問に対する認識。私は「無理」と認識しています。日本の婚外子に対する差別。一人親家庭に対する支援の貧弱さ。特別養子縁組の数が少ないこと。こうのとりのゆりかごに対する無理解。

緊急避妊ピルが必要になる理由は、単なる避妊の失敗から重大な虐待まであると想像されます。これが意味するのは、一つには「ピルを使わずにいると、安全で安心な妊娠期間を過ごすことができない」、二つめは「出産後に決して子を虐待しないと確信できない」。
とくに出産後の支援の貧弱さは、朝日デジタルが記事にしたように、
「子育てが辛い(助けて)と訴える母親に対し、『子供をもっと抱きしめてやれ』と指導する行政側の支援者」
という例に端的に表れています。(新聞記者が想像で書いてなきゃいいんですけど)
この二つの安全が保障されない社会構造であり、人々の意識であると認識しています。

緊急避妊ピルが安価に、市販薬となって手に入らなければ、先の2つはどちらも「子にとっても母にとっても」生命および生活へのダメージです。そこを第三者が感情論で、かつ、最初の認識で述べたような社会システムの不備を意図的に無視して、「母の人権を無視して」「子を産め」と要求するのは、愚かな意見の押し付けでしょう。
私には、
「スーパーウーマンになって、単身世帯がにわかに乳児かかえても、社会に頼らず、虐待せず、健やかに愛される子を育てよ」
という要求におもえます。
ところで人権と言うのは、どんな強靭さであれ、どんな弱体であれ、誰でももってる権利なんですよ。
誰かが不測の事態で妊娠した際、「母になる女性の人権だけは無視してよい」と考え、「緊急避妊薬の市販化に反対する、とにかく産め」と要求するのであれば、それこそ人権にかかわる意識の偏向を指摘されても仕方ないと思います。
緊急避妊薬の市販化とは、第三者が感情論でつべこべいうのとは別で、「女性の人権保障が、妊娠と言う自己決定のときに、身近な選択肢になるにはどうあるべきか?」というテーマの中の、ひとつの選択肢だと考えてます。
そうでないと、本質の問題、『選択の余地なく母にならされた女性とその子』の抱える問題が、
「調べる気はないし、助けてやる気も無いが、とにかく胎児殺しはまかりならん!
という人達のせいで放置されてしまうからです。そして、多摩湖さんだか誰かが危惧していたように、次は嬰児殺しが増えることを、私も危惧します。それは問題が胎児→嬰児に時間シフトしただけではないか、と。
「中絶を殺人」と言い張るのは、中学校の保健体育教科書に載っている知識からしても誤りです。人工流産といったほうが適切。そもそも「性交渉の前か、その後72時間以内の服用」時点で、受精した卵はどうなっているか。
卵は、受精してから25-27時間で2分割します。1細胞期だった卵が2細胞期胚(胚:受精卵)になるので、この時点から受精卵と呼びます。
体外受精の培養(不妊治療)のサイトを見ればお分かりのように、72時間くらいの受精卵は4細胞か、8細胞期でしょう。
あなたの感覚にとって、これは『ひと』ですか、『細胞のあつまり』ですか?
体外受精によらない自然妊娠でも、この時点で流産(着床しない)があります。それを「殺人」と呼びますか。『ひと』と認識しておらず、殺意もないのですよ。
自然状態での流産を殺人と呼ぶのは、無理のある主張でしょう。
ならば、この状態の卵を人工的に流産させることを、殺人と非難するのは『行き過ぎた弾劾』だと思います。
「望まない妊娠に由る子」の生活が他の誰よりもまず、「妊娠した女性の生活」と直結する。それ故、「嬰児殺しより、緊急避妊薬による胎児(というより受精卵)殺し」を女性の人権保障として『アリ』だと思います。

それでも「胎児殺しはゆるせなあああい!」と主張するのであれば。
その主張が説得力をもつような社会の仕組みはどうあるべきか、人々は簡単に「似てないよねー」と親子に言い放ってよいのか、婚外子への有形無形の差別、進学困難や就職差別につながる一人親家庭の貧困、といった部分まで細かく検討し、論じてないと説得力は薄いでしょう。そのような、安心安全に子育てのできる社会の枠組みや、差別撤廃への言及が見聞きされないのであれば、緊急避妊薬の市販化を妨げる言葉は『行き過ぎた感情論』です。

中絶を選択した女性に、さらに傷つけるような言葉を投げかけるのはやって良いことですか、悪いことですか。
「中絶せざるを得ない状況に追い込んだ片棒担ぎ」の存在は、都合よく忘れるというのなら、そんな行為は単なる「目につきやすい弱い者に石を投げる」行為です。公共性の高い場所にエロは出てくるな、と同レベルですね。

自分は手助け一切しないが、感情論で気に入らないので、女性の人権をまもるピルは滅すべし。

という主張には、私は同意しません。世の中には相対的に優先しなくちゃいけない事があって、それの一つは『緊急避妊薬がその夜のうちに手に入ること』だと思います。

本稿は「声大きくて感情的な意見に反論」の形ですので、普段からちゃんと避妊してる人向けにもちょっと一言。
スキンやペッサリーといった方法でふだんからちゃんとしてても、完全100%できるものではないです。ウッカリ、とか後で器具の破損に気づくとか、そういう場合にも『緊急避妊薬を手に入れるには、産婦人科を受診して処方箋を出してもらい(初診料、処方箋代ほかがかかる)、薬局で薬代(今のところ1万5千円ほど)を払う』必要があります。私はうーん、高いと思います。
性的なものに限らず、人が人を虐待する方法は多岐にわたるので、「緊急避妊薬が市販で安くなったらなったで生じる問題」はあるのですが。それでもマーカムHPクリームは売られているし、必要な人の手に渡るのを阻害してはいけないと思うのです。

産みたいとおもった人が産みやすい世になるよう、その逆が抑圧されることのない世になりますように。

元になったTogetterには、ピルとの付き合い方(公式)さん他、ためになる意見があります。参考までにURL紹介。

産むか産まないかの選択権と、その現状。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください