『ホテル・アルカディア』書評

ホテル・アルカディア著者 : 石川宗生集英社発売日 : 2020-03-26ブクログでレビューを見る»

奇妙で納得のいく物語集。星5つ。

一篇一篇のなかでは、推定されるジャンルの短編小説として、「体をなしている」し、なるほどこういう読後感を目指した掌編なのか、と納得がいく。
ところが、『都市のアトラス』で語られた『手』のように、一篇ずつの重なる部分を「重複」として意識したら。あるいは、同じモチーフ(同じ人名や、かすかな類似)を三次元的に、別の方向から接続した部分がある「繋がり」として意識した途端、事情は変わってくる。

この異質な感じは何だ?

ホテル・アルカディアには結局何が居て何が起きてどうなったのか?

その最大の謎すら、多層的に、冗談じみた短編7名義で語られる。それと、ほのめかしを含んだ未来を舞台にした物語で。

いわゆる、
「一本の、あるいは複数の糸を辿るようにして、たどりつきました大団円!」
タイプの娯楽物語を求める人にとっては、ストレスのたまることこの上ない。
だが、
「手触りすらはっきりした絹の手袋を片手に、ためつすがめつ、それを着用していた ”中身”については本当に人間だったかどうかさえ分からない」
ことを楽しむ、幻想の愛好家にはたまらない娯楽となろう。

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